1 はじめに

2 地図とグラフで見るぐんまの方言
 2−1 箸と橋のアクセント
 2−2 ガ行鼻濁音がない
 2−3 イとエの区別が曖昧
 2−4 「白い」はシレー(連母音)
 2−5 「帰る」はケール(連母音)
 2−6 「笑う」はワロー(連母音)
 2−7 変わるベーベーことば
 2−8 「来ない」がキナイ
 2−9 過去・過去回想のタッタ
 2−10 あたかさの伝わる文末詞ムシ
 2−11 方言敬語「ください」
 2−12 奥はオクリ
 2−13 生育地がわかる「ものもらい」
 2−14 「疲れた」はコワイ
 2−15 「どんどん」はメッタメッタ(促音化)
 2−16 「もう」はハー(副詞)
 2−17 ケンケンなんて言わない「片足跳び」
 2−18 肩車はテングルマ
 2−19 地域差の出る「お手玉」
 2−20 かけ声を調べたい「じゃんけん」

3 ぐんま方言資料案内
 3−1 『群馬県のことば』
 3−2 『群馬の方言』
 3−3 『群馬の方言−方言と方言研究の魅力−』
 3−4 『群馬の言葉となぞ』
 3−5 『上州の風土と方言』
 3−6 『上州ことば』
 3−7 『面白かんべエ上州弁』
 3−8 『上州弁読本』
 3−9 『群馬のことば』
 3−10 『群馬方言詩集 ふるさとひろって』
 3−11 『マックラサンベ 私の方言 村のことば』
 3−12 『利根のことば』
 3−13 『六合村の方言』
 3−14 『あちゃがら漫筆〜吾妻町方言誌〜』
 3−15 『ほのぼの方言』
 3−16 『ことばの話』
 3−17 『群馬のことばと文化』
 3−18 『奥多野残照』
 3−19 『桐生のことば』
 3−20 『《新方言》の動向』

4 群馬方言授業のヒント
 4−1 上州弁カルタを作ろう
 4−2 群馬の方言紙芝居を作ろう
 4−3 方言辞典を作ろう
 4−4 方言ニュースを制作しよう
 4−5 方言昔ばなし劇を作ろう
 4−6 ぐんま方言グッズを考えよう
 4−7 方言詩を書いてみよう
 4−8 方言ライブラリーを作ろう
 4−9 「京へ筑紫に群馬セー」の謎を解く
 4−10 3世代方言地図を描こう

5 おわりに

研究補助金による成果 TOP

4−9 「京へ筑紫に群馬せー」の謎を解く

1.単元の目標
○自分たちの住む群馬にも方言という姿で先祖の使っていた日本語が残っていることに気づき、方言を文化財として大切にしようとする。
○日本語には歴史があり、ことばは変化するものであることを知る。

2.学習内容と子どもの活動

 左図は、「東の方へ行け」というときの「へ」をどのように言うかを地図上に表した『方言文法全国地図』(国立国語研究所)の略図(小林隆2006『方言が明かす日本語の歴史』(岩波書店))である。お国ことばに関する言い伝えに「京へ筑紫に板東さ」(京都では「へ」、筑紫(今の九州)では「に」、板東(今の関東)では「さ」を使うという意味)があるが、その面影を地図上でも大まかに読み取ることができる。ところが、群馬県南牧村に「せー」という言い方が残っている。これはいったいどういうことなのだろう。この疑問を中心に方言やことばの変化について考えようという授業である。

3.展開のポイント
 ○言語地図を自力で読み解くことを通して、方言とことばの歴史の関係を知り、方言を文化財として大切にしようとする態度を育てたい。

4.展開例

第1次:日本や群馬の方言の実態を知る。(1時間)
○自分たちの群馬方言に珍しい言い方があることを知る。 ○言語地図「東の方へ(行け)」をみて、「へ(エ)」と言う地点が大半を占める関東地方にあって、群馬県内の南牧村に「せー」と言う極めて珍しい地点があることを確認する。
○「京へ筑紫に板東さ」という言い伝えについての説明を聞き、日本各地の言い方を見る。
第2次:言語地図の謎を考える。(0.5時間)
○言語地図の謎を考える。 ○なぜ群馬県内に珍しい言い方をする地域があるのか、自由な発想で考えを出し合う。
第3次:方言の価値を考え話し合う。(1.5時間)
○教師の解説を聞き、方言の価値を話し合う。 ○教師による解説(謎解き) 群馬県の「せー」は、「そちらの方へ移動する」といった意味で中古・中世前期に使用されていた「さまへ」の名残であり、東北地方の「さ」はそれがもっと縮まったものである(方言周圏論を紹介しつつ)。現在子ども自身も使う「へ(エ)」は東北地方の「さ」より新しい言い方であること。
○群馬方言や方言の価値について話し合う。